挨拶
皆さんこんにちはあるいはこんばんは!
ヒカリエブログでは「FIHEフィーヒ~QOLの向上~」をテーマにブログを更新していきます。
FIHEとは「Financial Independence(経済的自立)Health Promotion(健康増進)Experience(経験)」の頭文字を取った造語になります。
一度きりしかない人生をより質の高いものとするため、健康を土台に自由な生活を送れるように、皆さんへ有益な情報発信をしていければと思います。
今回のテーマは「人工呼吸器をつけた方が在宅療養で気を付けたいこと」についてです。
侵襲的陽圧換気療法人工呼吸器は、自分自身での呼吸が困難になった方に対して、生命の維持のために使用されます。気管切開を行う時などは緊急事態が多く、事前の準備もなく、気づいたら呼吸器が付いていた方も少なくないはずです。
病院では呼吸器の使用方法や呼吸の同調、呼吸機能検査でのフォローなどは行ってくれますが、自宅退院した際にどのように立ち回れば良いかまでフォローされる方は少ないと思います。
今回は「人工呼吸器をつけた方が在宅療養で気を付けたいこと」についてお話していきます。
初めて人工呼吸器をつける方やその家族に対して
人工呼吸器をつけた方に対する在宅での注意点が分かります。
今回は筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症(ALS)など神経難病の方に特化しておりますので車椅子の扱いについても併せて記載しております。
「人工呼吸器をつけた方が在宅療養で気を付けたいこと」は以下の3つです。
・誤嚥性肺炎の予防
・人工呼吸器装着後もなるべく離床する
・外出時の注意
誤嚥性肺炎について
人工呼吸器をつけるきっかけに多いのが「肺炎」です。肺炎は日本人の死因第5位へ位置し、その中でも特に多いのが「誤嚥性肺炎」です。
誤嚥性肺炎とは、簡単に言うと「食べたものが気管に入り、吐き出すことが出来ず、肺が炎症してしまう」状態の事です。
肺炎により十分な呼吸機能を保てず、その機能を補助するために呼吸器が導入されます。
しかし、人工呼吸器をつけていても誤嚥性肺炎になることはあります。
そして誤嚥性肺炎によって状態が悪化する場合もありますので誤嚥性肺炎の原因と対策は必要です。
誤嚥性肺炎の原因と対策については以下の記事を参照してください。
在宅で注意したい不顕性誤嚥
むせたり、咳き込んだりする明らかな誤嚥を「顕性誤嚥(けんせいごえん)」といいます。
一方、「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」といって、むせや咳き込むことのない誤嚥があります。
夜間の就寝中や寝たきりの場合によく起こり、気づきにくいため、 知らないうちに肺炎になってしまうことも。むせや咳き込み以外の誤嚥のサインを知っておきましょう。
むせ以外の誤嚥のサイン
・飲み込んだ後、湿ったガラガラ声になる
・風邪や尿路感染の症状がないのに頻繁に熱が出る。
・痰が増える
以上の症状が見られたら誤嚥性肺炎の可能性があります。
すぐに医療機関に診察することを推奨します。
誤嚥性肺炎の予防方法
全ての誤嚥が肺炎に発展するわけではありません。
誤嚥=誤嚥性肺炎というイメージが広がっていますが、すべての誤嚥が肺炎につながるわけではありません。
たとえ誤嚥しても、力強い咳で吐き出す力や細菌感染に対する体力・免疫力があれば肺炎に発展しない可能性もあります。
一方、低栄養や脱水状態にあると、抵抗力の低下を招き、肺炎を起こしやすくなります。
誤嚥を予防する工夫をするとともに、誤嚥を肺炎に発展させない体作りを目指すことが重要です。
そのためにしっかりと栄養を取り、口の運動や咳嗽力を鍛える運動を行いましょう。
人工呼吸器をつけたら寝たきりが良いのか
重篤な心不全等で身体に負担をかけられない場合は臥床が推奨ですが、基本的には離床(身体を起こすこと)が望ましいです。
端座位を取る(座ることの)利点は以下の6つが挙げられます。
①下肢の関節可動域が良好に保たれる
②上肢の拘縮を予防することができる
③重力がかかるために、排便がしやすくなり、便秘が解消される
④横隔膜の上下運動がしやすくなり、深い呼吸が可能になる
⑤胃腸の活動がしやすくなり、消化に良い
⑥表情筋に重力の刺激が加わり、表情豊かになる。
(またそのおかげでコミュニケーションがとりやすくなる)
などなど
特に人工呼吸器を使用する方であれば呼吸機能の維持が生命に直結します。
呼吸機能を考えたときに寝たきり状態では背部の肺が膨らみにくく、また痰が排出されない要因にもなります。
人間の肺は360度に広がるように設計されていますが、寝たきりでは一部の肺が拘束されやすくなり、廃用により呼吸機能の低下に陥ることがあります。
そのため、定期的に座位を取ることで肺を360度に広げる機会を得るほか、④にもある横隔膜が重力によって下方へ引き延ばされ、陰圧により肺が拡張することで呼吸機能が維持されやすくなります。
また、重力により下方へ内蔵定位し、循環器の機能も働きやすくなりますし、座位を取ると腹部が加圧され排便が促され、腹部膨満感の改善により食欲も維持されやすくなるなど、身体の機能的にはメリットが多いため、可能な限り離床して座位を取れるように心がけましょう。
人工呼吸器をつけた際の外出時の注意について
・侵襲的人工呼吸器(Tracheostomy Positive Pressure Ventilation:TPPV)を装着した者の自宅での車椅子乗車時に確認しておきたいこと(必要なこと)は以下の3つです。
- ハード(基盤)面の整備
- 想定されるリスクへの対応
- 知識・技術の啓蒙
・ハード(基盤)面の整備
外出の土台となる部分で注意点は大きく2つで(a)自宅の環境整備、(b)車椅子の設備です。
a)自宅の環境整備
ベッドから車椅子への移乗方法の確保と自宅内および自宅外に出るまでの車椅子の動線確保など、外出を想定した環境整備が必要です。
ベッドから車椅子までの移乗は人力で行うのか、リフターを使用するのか。自宅内の移動は車椅子で行うのか、介助者に運んでもらうのかといった確認が必要になります。
b)車椅子の設備
安全な外出をするための車椅子選定・工夫のポイントは4つあります。
ⅰ)長時間同一体位を防ぐため、チルト・リクライニング機能があるものを選定する。また、フットサポートもエレベーション機能等を有しているとなお良い。
ⅱ)人工呼吸器・吸引器などの使用機器の搭載が可能な台を取り付ける。
ⅲ)呼吸器回路の巻き込みや引っ掛かりによる回路破損やカニューレ固定のズレ・抜去などを防ぐため、呼吸器回路を固定する留め具を車椅子に取り付けるなどのここに合った工夫をする。
ⅳ)地面が不安定な場所の走行や車で移動する際は、頭部が大きく揺れることがある。在宅人工呼吸療法(Home Mechanical Ventilation:HMV )療養者は不快と感じるだけでなく頸椎損傷の危険も伴うため、頭部が動かないようにヘッドレストと固定する。
- 想定されるリスクへの対応
a)シミュレーション
シミュレーションで重要な点は患者に関わる全ての人で意見を出し合うことです。
まずは自宅周囲を想定した外出から始め、実践・フィードバックを繰り返しながら、徐々に外出範囲や外出手段(介護タクシー・バス・電車などの利用)を拡げていきましょう。
シミュレーション→実践→フィードバックを繰り返すことで、自分たちに必要な知識・技術に気づくだけでなく、状況に応じた判断や行動が出来るようになります。
b)持ち物準備
参考例を以下に示します。ただし、外出時の持ち物リストは患者本人のオリジナルを作成するとより円滑に外出しやすくなります。
外出時物品
緊急連絡先
・知識・技術の啓蒙
a)車椅子の操作方法
患者本人が操作方法を獲得していても緊急時などに介護者が操作・移動させる機会もあります。
基本的なチルト・リクライニング操作の他、電動車いすであれば手動・自動の切り替えスイッチの場所などを把握していると良いです。
b)バイタルの確認方法
バイタル測定の技術だけでなくバイタルの値を理解しておくことが必要です。
血圧の値やSpO2モニターの値など、普段から観察を行い、いつも通りなのかそうでないのか程度は判断できると良いです。
c)蘇生バック(Bag Valve Mask:BVM)の使用方法
人工呼吸器に異常が生じた際はBVMで緊急対応をします。
人工呼吸器が正常に機能しないということは患者の命に直接関わる問題であり、BVMの技術獲得および介助者への技術伝達は最重要事項です。
緊急事態に冷静に対応できるように月1回はBVMの練習をすることが望ましいと思います。
その際、必ずSpO2モニターを装着し、苦しいときの表出方法を決めておくと良いです。
緊急時は気が焦ってしまうことが多く、実際にはカウントが早くなりすぎたり、BVMを押す力が強くなったりと換気過多に陥りやすいため、意識的にゆっくり行うことを心掛けたいです。
マノメーターなどを使用し、普段からBVMを押した際にどの程度の圧が掛かっているのか等を知れるとより良いです。
d)人工呼吸器のモニタリング
人工呼吸器は移乗があった場合(例えば回路に穴が開いた・人工呼吸器が外れたなど)にアラームが鳴るように設定されています。
アラームが鳴った際に素早く異常を検知するために、日頃から人工呼吸器のモニターを確認し、正常値を把握しておく必要があります。
まとめ
「人工呼吸器をつけた方が在宅療養で気を付けたいこと」は以下の4つです。
・誤嚥性肺炎について知る。
・誤嚥性肺炎予防(嚥下・呼吸リハビリテーション)を行う。
・可能な限り離床を行う。
・外出を楽しむ。
人工呼吸器を導入する前後で生活は大きく変わります。
それは当事者からしたらとても、とてもツライことだと思います。
しかし、出来ないことばかりに目を向けるのではなく、どのようにしたら出来るのかに目を向け、自分自身の「やりたい!」に素直になって、周りと相談しながら行動してみてください。
出来るまでやれば出来る!
やりたいことを諦めない!
自分一人だけとは考えないでください。
いつでも医療スタッフに頼っていただければと思います。
これからもヒカリエブログでは「FIHEフィーヒ~QOLの向上~」をテーマにブログを更新していきます。
一度きりしかない人生をより質の高いものとするため、健康を土台に自由な生活を送れるように、皆さんへ有益な情報発信をしていければと思います。
今後も「資産運用」の話や「健康」、「経験」についてもお話していきますので、興味がある方は是非フォローよろしくお願いします。
本日も最後まで閲覧していただきありがとうございました。
参考文献
こんかいの記事は以下を参照して作成しております。
神経難病リハビリテーション100の叡智 (NanーReha):寄本恵輔 監・著
【中古】 神経難病リハビリテーション100の叡智 (NanーReha) 価格:11,792円 |
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